物流業界で大きな問題となっているのが人手不足や環境問題ですが、問題解決のために低負荷の鉄道や船舶にシフトする企業も増えてきました。
最近ではLNG燃料で運行しているフェリーも登場し、環境に優しい輸送も可能になっています。
この記事では、LNG燃料で運行するフェリーを使った輸送について解説していきます。
LNGとは?特徴やメリットを解説
LNGとは、液化天然ガス (Liquefied Natural Gas) の頭文字をとったものを指します。
本来の天然ガスは気体ですが、産出国とパイプラインでつながっていないこともあり、-162℃まで冷却して液化したものを輸入しています。
液化することにより体積が600分の1まで減るため、輸送コストが下がるからです。
またLNGは、石油や石炭などの化石燃料に比べて燃焼時に大気汚染物質の排出を抑えられるといった特徴があります。
CO2(二酸化炭素)の排出量は石炭と比較すると30%減、石油と比較しても20%減といった数値です。
さらに窒素酸化物(NOx)の排出量は石炭と比較すると80%減となり、SOx(硫黄酸化物)に至ってはLNGの場合は排出量がゼロと地球温暖化や大気汚染に大きく寄与しています。
LNGの用途としては、70%近くが火力発電所の燃料として利用され、残り30%が都市ガスに利用されています。
LNGを燃料にしたフェリー『さんふらわあ くれない』誕生
出典:フェリーさんふらわあ公式から引用
その環境に優しいLNGを燃料にしたフェリー『さんふらわあ くれない』が、2023年1月に営業を開始しました。
一般的なフェリーは燃料にC重油 (石油や灯油を精製する際に最後に残った燃料成分) を使用していますが、『さんふらわあ くれない』ではLNGと重油のそれぞれを使用できるエンジンを搭載しています。
これにより、大気汚染の原因となる成分を大幅に削減する環境性能を達成しています。
また静粛性や快適性を高めただけでなく、貨物輸送面も大幅に向上しました。
従来の『さんふらわあ こばると』ではトラックの積載可能台数は92台 (13m換算) でしたが、『さんふらわあ くれない』では50%増の137台となり輸送力の向上につながっています。
フェリー輸送は2024年問題にも効果大、大手も共同配送に取り組む
LNGフェリーは環境性能に優れている移動手段ですが、今後物流業界が抱える2024年問題の解決のきっかけになると考えている企業も多いようです。
半導体装置製造メーカー大手の東京エレクトロンでは、2022年より従来の輸送手段であったトラックでの陸送をフェリーなどの航路に切り替えて人手不足の解消に努めています。
また佐川急便では、関東圏から九州圏の長距離輸送の一部を日本郵便との共同配送による航路へ切り替えることにより、CO2排出量を59%削減、トラックドライバーの運転時間を90.7%削減する見込みとなっています。
その他物流大手のヤマト運輸や西濃運輸でも航路の拡充を視野に入れており、フェリー業界も急ピッチで開発、製造が行なわれています。
このようにフェリーでの輸送は、ドライバー不足の解消や人件費の高騰によるコスト削減につながる有効な手段といえるでしょう。
また航路は陸路と違い、事故や天災による延滞が起きにくいため、安定した輸送が可能となります。
まとめ
フェリーなどの航路での輸送は、環境負荷の軽減や人手不足、労働時間の問題を解決できる優れた輸送方法といえます。
現在は陸送がメインの企業も2024年問題がすぐそこにきている以上、今後はフェリーなどによる貨物輸送を考慮する必要があるでしょう。
フェリーなどの輸送の弱点でもある小口貨物も共同配送が増えてくれば、コンテナにまとめて輸送する方法など物流の可能性が広がります。